宝冠意匠帖ほうかんいしょうちょう

身分から探す

公爵と伯爵の宝冠の違い、王と王太子の冠の違い、未婚の令嬢がティアラを着けてよいか。身分を選ぶと、その身分が着ける冠と勲章が見られます。

時代 × 身分の描き分け

その時代の夜の正装で、頭・首と胸・耳と手・勲章に何を着けるか。付録で確かめきれない行には「推定」と出しています。
身分頭首と胸耳・腕・指勲章
中世(〜1500)
王・王妃推定開いた冠(輪に百合・葉・十字)。王妃はヴェールの上に載せるポイントカットとカボションの石、真珠指輪―(勲章の等級の型は 19 世紀から)
貴婦人推定ヴェールの上に細い輪か花冠―――
ルネサンス・バロック(1500〜1720)
王・王妃推定閉じた冠(戴冠式)。王妃は小さな宝冠テーブルカットの石と真珠の首飾り、大きな垂れ飾り指輪騎士団の頸飾
貴婦人推定フェロニエール(ルネサンス)、髪の網と真珠・リボン・小さなブローチ(バロック)真珠の連、リボン結びのブローチ(セヴィニェ)を胸に――
男性の貴族推定帽子にエグレット(羽根飾り)―指輪騎士団の頸飾
ジョージアン(1720〜1795)
王妃・既婚の貴婦人(宮廷の正装)推定盛り上げた髪に花のピン・エグレット・宝石の小枝。ティアラはまだ無い胸の三角を覆うストマッカー、リボンのブローチ、リヴィエールジランドール(三つの雫の耳飾り)、ジャルディネットとクラスターの指輪―
男性の貴族推定―上着に縫い付けた刺繍の星章(銀糸とスパンコール)指輪大綬 1 本と刺繍の星章
摂政期・帝政(1795〜1830)
皇后・既婚の貴婦人額の高い位置に古典のダイアデム・カメオのダイアデム・花輪。後ろの髷に櫛カメオの一式、エスクラヴァージュ、細い長い鎖トワ・エ・モワ、色石の大きな指輪―
未婚の娘推定短い巻き毛にバンドーや花、フェロニエール細い鎖、小さなカメオ――
ヴィクトリア前期(1830〜1860)
既婚の貴婦人推定花枝のティアラ・花輪・フェロニエールを頭の横から後ろに、耳の上の巻き毛と組むスプレー(花束のブローチ)、ビブ、ロケット長い耳飾り、蛇の指輪、ストラップの腕輪を左右に―
未婚の令嬢推定花とリボン短い真珠の一連、珊瑚、トルコ石、小さなロケット小さな耳飾り―
ヴィクトリア中期・後期(1860〜1900)
女王・王妃推定小冠かティアラ。喪の宮廷は黒と白(真珠・ダイヤ)国の宝飾の一式、リヴィエール一式の耳飾りと腕輪婦人の勲章の大綬(細い)
既婚の貴婦人高く結った髪に星のピン・フリンジ・山形のダイアデム。1890 年以降はココシュニク形もコリエ・ド・シアン(1865 年ごろ〜)、星と三日月のブローチ小さな一粒の耳飾り、バングル、ハーフフープ―
未婚の令嬢・デビュタント推定花とリボン。拝謁は白い羽根とヴェール短い真珠の一連、小さなロケット、バーブローチ小さな耳飾り―
男性の貴族・騎士―シャツの前にスタッド印章指輪 1 つ、懐中時計の鎖金属の星章。燕尾服では大綬を上着の下、夜はミニチュアを左襟
ベル・エポック(1900〜1914)
既婚の貴婦人膨らませた高い髷の前にティアラ(ガーランド様式・ココシュニク形・真珠の垂れ)コリエ・ド・シアン、デヴァン・ド・コルサージュ、ソートワール。白一色(プラチナ・ダイヤ・真珠)小さな耳飾り、ライン・ブレスレット婦人の勲章は蝶結びの綬を左胸に
未婚の令嬢・デビュタント推定花。拝謁は白い羽根とヴェール短い真珠の一連、ラヴァリエール小さな耳飾り―
アール・デコ(1914〜1939)
既婚の貴婦人1920 年代は額に低く水平のバンドー、1930 年代は後ろへ傾けるヘイロー。ロンドンの宮廷ではティアラが必須腰までのソートワール、襟のドレスクリップ肩まで下がる長い耳飾り、細い腕輪の重ね付け、カフ―
未婚の令嬢・デビュタント推定短い髪に花かバンドーなし。拝謁は白い羽根とヴェール真珠の連(1920 年代から養殖真珠で長い連も)長い耳飾り―

身分 × 場面

何を着けてよいかは、身分より場面(夜か昼か・式の種類)と既婚・未婚で決まります。主に 1830〜1914 年の英国の宮廷と作法書の決まりです。
身分戴冠式拝謁婚礼夜会・舞踏会昼の行事叙勲・式典喪
王・皇帝(男性の君主)王冠・十字の王笏(右手)・宝珠かハトの王笏(左手)・戴冠の指輪―軍服に勲章着けない 王冠推定軍服か宮廷服に最上の勲章の大綬 1 本と星章着けない 王冠推定モーニングに星章 1 つまで着けない 大綬頸飾の日は頸飾(大綬は外す)着けない 頸飾と大綬を一緒に―
女王(主権者)王冠と宝器推定―ヴェールに花冠かティアラ推定ティアラか小冠、国の宝飾の一式推定帽子、簡素な宝飾着けない ティアラ――
王妃・皇后王妃の冠(王の冠より小さく軽い)。王妃の王笏――ティアラと国の宝飾の一式、婦人の勲章の大綬(細い)着けない 王妃の冠帽子、真珠、小さなブローチ着けない ティアラ婦人の勲章。下の等級は蝶結びの綬を左胸に黒の服にジェット。宮廷の喪は黒と白(真珠・ダイヤ)着けない 色石推定
王太子王太子の宝冠(アーチ 1 本)着けない アーチ 2 本の王冠―軍服に勲章着けない 宝冠軍服か礼服に大綬と星章着けない 宝冠―大綬と星章推定―
王女(未婚)王の子の宝冠―生家のティアラとヴェール18 歳からティアラ。それまでは花とリボン帽子、真珠着けない ティアラ――
王子王の子の宝冠推定――軍服に大綬と星章着けない 宝冠推定―――
公〜男爵(男性)位の宝冠(王に冠が載った時にかぶる)と議会の式服推定――燕尾服か軍服に、もらった勲章だけ。燕尾服の大綬は上着の下着けない 宝冠、上着の上の大綬モーニングに星章 1 つまで着けない 大綬等級ごとの着け方―
公〜男爵の夫人(既婚)夫と同じ位の宝冠を小さく作り、ティアラの後ろに載せる推定ティアラ、白い羽根とヴェール推定婚家か自分のティアラティアラ・リヴィエール・耳飾りの一式着けない 位の宝冠金と銀の簡素なもの、小さなブローチ、時計着けない ティアラ、大きなダイヤ―深い喪は艶を消したジェットだけ。半喪で紫水晶・真珠着けない 色石、光るダイヤ推定
騎士・勲爵士―――燕尾服で首の勲章を蝶ネクタイの下、ミニチュアを左襟着けない 実物大の勲章を胸に並べるモーニングで実物大のメダルバー着けない 大綬等級の着け方(首・胸の小綬・星章)。軍服の大綬は肩章の下推定―
令嬢(未婚)―白い羽根(頭の左寄り)とヴェールかラペット、控えめな真珠着けない ティアラ推定生家のティアラか花冠とヴェール花・リボン・小さな髪飾り、短い真珠の一連着けない ティアラ、大きなダイヤ推定小さなロケット、珊瑚、トルコ石、カメオ着けない ダイヤ、ティアラ推定―ジェット着けない 色石推定
既婚の夫人(爵位の無い家)―ティアラ、白い羽根とヴェール推定―ティアラ(あれば)・ダイヤ・真珠の一式着けない 一式を混ぜる(腕輪は違ってよい)推定低い品位の金・ペースト・小さなブローチ着けない ティアラ推定―深い喪は艶を消したジェット、髪の細工のロケット着けない 色石推定

取り違えやすい所

  • 舞踏会で王が王冠

    王冠は戴冠式と、英国では議会の開会など、ごく限られた式でしか頭に載せない。舞踏会の王は軍服か宮廷服に勲章を着け、頭には何も載せない。

  • 夜会で公爵令嬢が宝冠

    英国の爵位の宝冠は、戴冠式の席で王(王妃)に冠が載った時に貴族がかぶるもの。夜会の髪飾りにしない。宝石も付けない。

  • 未婚の令嬢がティアラ

    ティアラは既婚の女性のもの。未婚の娘が着けるのは自分の婚礼の日だけ。王女は 18 歳から。英国の拝謁のデビュタントは白い羽根とヴェール。

  • 昼の園遊会でティアラ

    ティアラは夜の正装・晩餐・舞踏会・宮廷の夜の拝謁のもの。昼は帽子で、宝石は控える。

  • 王妃が王と同じ冠

    王妃の冠は王の冠より小さく軽く、全面をダイヤで覆う型が多い。

  • 王太子に王冠

    王太子の宝冠はアーチ 1 本。王のアーチ 2 本(英国)と描き分ける。

  • 大綬を左肩から・何本も

    ほとんどの勲章の大綬は右肩から左腰で、1 度に 1 本。英国のガーター・シッスルは左肩からの例外。燕尾服では上着の下に掛ける。

  • 喪の場面に色石

    深い喪は艶を消したジェットか宝飾なし。喪が浅くなってから真珠・紫水晶・灰・藤色が戻る(期間は推定)。

  • 日本の宮廷に王冠

    明治以降の日本の宮廷に西洋式の王冠は無い。洋装の皇后・皇族妃はティアラ。男性の華族は大礼服で、爵位は刺繍の色で分けた。